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 ◆副作用報告の精度を高めるために◆

2003/07/18  全日本民医連安全性モニター副作用モニター作業チーム

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  新システムの普及により、これまで報告がなかった各県連からの報告も増え、副作用モニターの活動が前進してきています。これらの副作用データを分析し教訓を明確にして活用するためには、一例一例の報告精度が高いことが求められます。この間の報告の中で、重症度(重篤度)の「該当なし」が相当件数あり、重篤な副作用例が分析から漏れてしまう可能性が生じますので、分類基準に該当しないものを「その他」としグレード1~3を以下の基準で判断(判定)し入力してください。また重篤度、因果関係の評価についてなど、基準に基づかないものもいくつか見られます。混乱や誤解が見られた事項について考え方を整理し例示しましたので、併せて徹底してください。

注)重症度については、プログラムのバージョンが最新でないと「その他」の選択肢がないのでバージョンアップするか、「その他1」などと手入力してください。

(1) 重症度

1)重症度と重篤度

 入力プログラム上重症度になっていますが、医薬品の副作用重篤度分類基準(厚生省通知)にもとづいて重篤度を分類しています。基準にない副作用がたくさんあり、「該当なし」となっていますが、基本的にこの分類基準は、重篤な副作用について決められたものであり、該当ないものはほぼ「重篤でない」と判断されるものと考えることができます。全日本民医連副作用モニターでは、安全モニターの意義から考えて、重篤度の分析は非常に重要です。すべてについて重篤度をつけていただくよう、厚生省の基準に準じ、下記基準をあらたに設定します。

 重篤と重症は異なります。重篤度は命の危険に関わる度合いであり、重症度は症状の重さを言います。たとえば「脱毛」の程度が頭髪すべて抜け落ちるほどあったとしても、これにより生命の危機に瀕することはありません。「多毛」「爪の黒変」「歯肉肥厚」「女性化乳房」なども他の生命維持に必要な組織の障害や機能障害を伴わないものは重篤度としては「1」とします。

2)分類基準にあるもの

 視覚・視力の異常など眼症状については患者の表現が多様なためか、該当なしになっている報告が多く見受けられます。「目がチカチカする」「見えづらい」などは、重篤度分類基準の〔精神神経症状〕-感覚器機能障害-視覚障害のうち、「自覚的な症状」に照らして判断してください。

3)分類基準にないもの

 菌交代現象によると思われるカンジダ症も多く報告されます。口腔カンジダであれば、局所性と考え〔消化器1〕、食道カンジダの場合、必要とした治療の程度により1 または2を判断してください。ただし、口腔カンジダであっても症状がひどく難治性であれば2 と判断できます。内分泌異常のうち、女性化乳房は〔その他1〕低体温、体重増加、浮腫などそれ以外に症状を伴わない、あるいは機序不明でなんらかの機能異常が認められない場合はすべて〔その他1〕としてください。

4)間違えやすいもの

 排尿困難と乏尿の混同されているケースがありました。「尿が出にくい=排尿困難」と「尿量が少ない=乏尿」は異なります。前者は自律神経系の症状であり、出にくい程度であれば〔その他1〕、導尿などの処置が必要な「尿閉」であれば〔その他2〕とします。後者は腎障害として、尿量により分類しますが、尿量が把握できない場合は1 とします。循環不全で乏尿・無尿をきたす場合ももちろんありますが、その場合は他の一連の症状に伴うものですので区別します。「排尿回数が少ない」という場合は、「出にくい」と「量が少ない」の両方が考えられます。客観的に判断できるような聞き取りが重要になります。

5)その他

以下を判断基準として分類してください。

グレード1

一過性、可逆性、自覚的な、がまんできる程度の、限局性の、治療を要しない程度の症状、実質組織の障害や機能障害を伴わない検査値の異常

グレード2

 症状が長く続く、程度が強く症状把握が可能なもの、他覚的に認められる、客観的にも認められる一過性の障害、治療を必要とする程度の、広範囲に分布するもの

 グレード3

厚生省の副作用重篤度分類基準にないもので3に該当するものはまずないと思われるが、非可逆性の、日常生活上重大な支障をきたす障害、後遺症が残っている、介護を必要とする、症状が重くコントロール困難なもの

 (2) 副作用名と症状分類

入力マニュアルにあるとおりですが、わかりにくい部分について若干説明します。

1)「浮腫」について

  浮腫はアレルギー症状として眼瞼、顔面などにとしてあらわれるもの(ただし血管浮腫は気道に起こる呼吸困難を伴う重篤なものであり明確に区別する)、腎機能障害、心不全など循環系の異常で起こるもの、肝不全など血清アルブミン値が低下による場合など、さまざまな原因で生じる症状のひとつです。原因疾患(機序)が特定できない、腎不全の症状としてあらわれている場合は、副作用名も急性(または慢性)腎不全とし、浮腫を副作用名として別に起こす必要はありません。症状分類は「腎臓」となります。このように、他の原因疾患(機序)が特定できず、「浮腫」のみ症状としてあらわれている場合を「浮腫」で分類してください。その際には実質臓器などの障害を伴っていないので重篤度は1と判断します。

2)主訴(自覚症状)のみで他覚的な所見がない場合の副作用名

実際の報告を例示します。

 低血糖症状~血糖値が測定されていない場合は低血糖様症状、重篤度は判断できないため通常は1とします。血糖値が測定されている場合は、〔代謝・電解質異常〕の分類基準に従い判断してください。

 血小板減少~血小板数が正常範囲内の変動での紫斑出現に対して血小板減少症とは言えません。紫斑はアレルギー性で生じる場合もあります。軽度の出血傾向(皮下出血)と判断できる場合は〔血液1〕と判断し、発疹と判断できる場合、全身性であれば〔過敏2〕となります。

3)検査値異常

 ある検査値が異常値を示すが、実質臓器の障害や機能異常を疑う他の所見がない場合に「検査値異常」と分類します。迷うのがCPK 上昇のようです。CPKの上昇のみで他の所見がない場合は検査値異常となります。筋痛が生じている場合、副作用名は「筋痛」または「筋障害」となります。CPK 上昇はなんらかの筋障害の裏付けであり、筋痛とCPK 上昇がそれぞれ独立した副作用ではありません。CPK 値は経過で記述してください。横紋筋融解症は当然ながら診断基準にもとづいてください。尿酸値上昇についても、痛風などの症状が起こっていなければ検査値異常です。

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